kbt1235's diary

2児の子育て、時々クライミング、登山、キャンプ。

赤蜘蛛+スーパークラック

赤蜘蛛ルート。
それは、山梨は甲斐駒ケ岳の赤石沢Aフランケにある、
日本を代表とする名クラシックルートだ。
アプローチである黒戸尾根は、日本三大急登の一つと言われる長大な尾根で、
目的地である8合目まで7〜8時間かかる。

赤蜘蛛ルートは、1971年に初登され、20年の時を経て、
1991年に鈴木昇巳氏らによってフリー化された。
フリー化されたルートは「スーパー赤蜘蛛」と呼ばれる。
ちなみに、Rock&Snowの最新号(52号)でも日本のマルチ10選の一つとして紹介されている。

スーパー赤蜘蛛とオリジナルの赤蜘蛛とは、若干ライン取りが異なる。
オリジナルの赤蜘蛛が7ピッチ目から続くクラック(通称スーパークラック)を
避けているのに対して、スーパー赤蜘蛛はこのスーパークラックを登る。
6ピッチ目のクラックは、スーパークラックと繋がっており、
6、7ピッチ目を合わせると、全長70mのきれいなクラックになっている。

初登当時のギアでは、幅の広いクラックを登ることができなかったのだと思うが、
7ピッチ目のスーパークラックをそのまま継続して登る方が、ルートとしては合理的と言える。
これはフリーで登られるべきではないかと、常々思っていた。
今年の6月に瑞牆の春うらら(11b)とペガサス2P目(11a)が登れたので、
このスーパークラックのオンサイトに挑戦してみようと決意した。

2003年にスーパー赤蜘蛛を全ピッチオンサイトした平山ユージ氏が、
このクラックのことをワールドクラスのクラックと評しているように、
ヨセミテにあったとしても全くひけをとらない、完全に日本離れしたクラックだ。

6ピッチ目のクラックは11b/c、7ピッチ目のスーパークラックは11a/b、
レッジトゥーレッジの70mでリンクして登った場合のグレードは12-。
今回、自分が目指したのは、7ピッチ目のスーパークラック(11a/b)のオンサイト。

限界グレードぎりぎりで、一生に一度しかないオンサイトトライ、
しかもマルチピッチの7ピッチ目、そしてワールドクラスのクラック。
相手としては申し分ない。

結果から言うと、オンサイトには失敗した。
11a/bのグレードがついている下部のフィンガー・シンハンドの核心をこなし、
上部の10+の弓のように左上する垂直のハンドクラックを終え、レッジに立った。
もうオンサイトはもらったと思ったのだが、あと数手のところでフォールした。

クラックをそのまま左上してしまったが、クラックが苔むしていて、
その先もかなり脆く、とてもまともに登れる状態ではなかった。
最後は右のフェースに逃げるのが正解のようだった。
オンサイトには失敗したが、不思議と悔しさは全くない。
この素晴らしいクラックをオンサイトトライできたこと、
そして善戦できたこと、それで十分だった。
生涯忘れることのできない、人生で最高のクライミングができたと思う。

すでに20年も前にフリーで登られながら、
未だにこのクラックを避けて人工で登るのは、はっきり言ってもったいなさすぎる。
これはフリーで登られなければならないクラックだと思う。


各ピッチのメモ。

1P目(5.11 25m) ジュニア
スーパー赤蜘蛛の場合、赤蜘蛛の2mほど右から取り付く。ガバなので特に難しくない。3ピン目から赤蜘蛛に合流する。細かいフェースで、スタンスがかなり磨かれていて難しかった。結局A0混じりで抜ける。後半はクラックが登れる。11ノーマルくらいは最低でもあると思う。#3、#0.75など使用。先行パーティーに先を譲ってもらう。

2P目(5.9 40m) tama
小川山レイバックを思わせる綺麗なコーナークラック。小川山レイバックの傾斜がなくなった感じで、30m延々と続く。とても楽しいピッチ。下部ピッチのハイライト。

3P目(5.10+ 15m) ジュニア
意外と悪いフェースとクラック。ここでも#3を使用。ちょっとA0したけど、ほぼフリーで。V字ハング直下のビレー点まで。ちなみにスーパー赤蜘蛛の場合は、V字ハングを避けるためにさらに左上のビレー点へ行くものと思われる。体感は5.10+。

4P目(5.10- 40m) tama
V字ハングはヌンチャクつかみながら抜ける。その後のハングは、ホールドは探せばかかりの良いのがあるので見た目よりも簡単。大テラスへ到着。ビバークできそうな広いテラス。

5P目(5.8 25m) ジュニア
ブッシュや木が生えてるきたない凹角を2段登る。一歩進めば支点が見える。クロスライン直下まで伸ばす。トポでは45mとなっているがせいぜい25mでしょう。

6P目(5.11+ 40m) tama
出だしの3本くらいはリングボルト。右のクラックからもプロテクションは取れる。その後はカムの人工がしばらく続く。クラックの横にボルトが打ってあるところもあり、これはちょっと残念。サイズとしては大体#0.5、#0.75サイズ。
自分はフォローでスーパー赤蜘蛛のラインを登る。出だしのクロスラインはぼろいので注意が必要。チキンヘッドがぐらつてもげそうになる。小ハングのところで、左のフィンガークラックへ移る。その後は、意外と厳しいフィンガーセクション。だんだんクラックが広がり、最後あと5mほどのところ、クラックが3本くらいになっている箇所が核心。ここまでなんとか頑張っていたが、たまらずテンションした。私にはシンハンドよりもちょっと狭い感じで、フィンガーがうまく決まらない嫌なサイズ。クラックの途中でピッチが切れているため、ハンギングビレーになる。赤蜘蛛はここから右のボルトラダーへ。スーパー赤蜘蛛は、このままスーパークラックを登る。


7P目(5.11- 30m) ジュニア
出だしのフィンガー・シンハンドのセクションが核心。徐々に幅が広くなってくるが、#3がすっきり入るようなサイズではなく、#3を無理やりねじ込む。#2が3つほしかったが、ハンドがかなりよくきまっているのでランナウトをするしかない。最上部、ガバ足になったところから一歩進み、右のフェースへ逃げるのが正解のようだ。

8P目(5.11-? 30m) tama
このフェースはいやらしい。トポでは10aとってなってるけど、最低でも11はあるでしょう、これは。ここで少し雨が降ってきてたのでA0で抜ける。リードの場合はA0では無理かもしれない。

9-10P目 ブッシュ。50m程度でAフランケの頭の岩小屋へ。

ギア

ヌンチャク20本、キャメロット(#0.5〜#3)2セット、エイリアン(赤黄緑)2セット、スリング(長短)・カラビナ多数、50mダブル2本。
※スーパー赤蜘蛛をやるならば、シングル1本+バックロープを引いて登り、荷物を上げるというのがよいと思われる。
キャメロット#3は1個でもよい気がする。むしろ#2が3つほしかった。

アプローチ

8合目のBCから岩小屋を背にして右が八丈バンド奥壁への道。下にそのまま進むのがAフランケ。ピンクのテープがあるので基本的には迷うことはないと思う。巨石群を越え、木にピトンが打ってあるところを降り、Fixを降りたところのT字路で右に行くと、Aフランケの頭の岩小屋へ辿り着く。Aフランケ下部へ行く場合は、T字路を左へ進む。一旦ガレた沢に出る。Fixの連続なので迷うことはないと思う。末端の水場の水は、まともに出ていなかった。

日程

5:10 8合目のテン場発
6:00 Aフランケ着
7:25 赤蜘蛛登攀開始
15:00 Aフランケの頭の岩小屋着
16:00 8合目